生きもの調べ

子どもの探究心を刺激する新たな体験の機会の提供

見沼ファーム21の体験水田では、安全・安心な米づくりの体験の場として、2004年から除草剤は使用せず、無農薬で米づくりを始めました。その後、4年経過した2008年には、他の田んぼでは見られないカブトエビやホウネンエビが観察されました。

「田んぼには他にどのような生きものがいるのだろう」との見沼ファーム21の会員の素朴な疑問や探究心の芽生えと、「子どもたちがたんぼの中にいるオタマジャクシやカエルなどを夢中で追いかけている姿を見て、体験活動に参加する親子と一緒に田んぼの生きものや植物を調べようと思い立ったのがきっかけで、平成21年から始めたのが「生きもの調べ」です。

調査は年4回、季節や天気によって異なる生きものを子ども自らや親子で採取し、環境カウンセラーがその場で名前や特徴を解説する形で、2009年から継続実施し、20周年を迎えた2018年までの累計の参加者は 1,488人となり、田んぼに棲む生きものたちを通じて貴重な自然環境や田んぼの多様性などを、楽しく学ぶ場になっています。

コロナ禍の影響で2020年、2021年は体験参加者による生きもの調べを実施することができませんでした。

目指すもの

調査は子どもたちと一緒に行い、子どもたち自身が自分の体で体験し、楽しんで出来る方法で、生きものへ“豊かなまなざし”を向けてくれることを目指しています。

参加者

体験水田の参加者の中から、希望した子どもと保護者です。

調査している田んぼ

「加田屋たんぼ」「新加田屋たんぼ」「ドロンコたんぼ」とその周辺。各田んぼとも農薬を使用していません。

調査方法

「加田屋たんぼ」「新加田屋たんぼ」では、虫や魚などの調査を田植え後、中干し前、出穂後の3回、草花の調査を1回、計 4回行います。田んぼの作業前8時から9時までの1時間、子どもたちは自由に生きものを採取し、名前を調べ、種類別に分類します。最後に環境カウンセラーの桑本潔さんから特徴などの説明をうけます。観察画も描き記録として残します。また当会の会員が通常の作業中に確認したものも記録しています。

「ドロンコたんぼ」では、夏の間、取水口にネットを仕掛け用水路からどんな生きものが入って来るか調べています。

環境カウンセラーの説明を聞く子どもたち

草花の観察画を描く子どもたち

生きものを観察する真剣な眼差し

調査結果と広報活動

2009年から2018年までの10年間の調査で、生きもの230種(絶滅危惧種18種)、草花 180種(絶滅危惧種7)を確認しました。そしていろいろな生きものがいることで生物のバランスが保たれ、農薬を使わなくても、害虫の大発生を抑えることが出来ている田んぼだということが分かりました。調査の結果は、毎年秋に子どもたちと「生きもの調べまとめの会」を開き、確認できた生きものや草花のことを映像で振り返りながら、田んぼの仕組みや田んぼを取り巻く貴重な自然環境のことなどを楽しく学んでいます。調査結果は写真や表に整理し、参加した子どもたちや関係者に配布しています。

また、確認できた生きもの写真はパネルにして、田んぼの作業日に畦に展示して参加者に見てもらいます。パネルは地域の催し会場でも展示し、当会の水田保全活動や、田んぼにどれだけ身近な生きものがいるのかなど、米作りだけに留まらない田んぼの大切さや、見沼地域の自然をいかに田んぼが担っているかなどを伝えています。

企業や見沼区の支援により調査の結果をまとめた小冊子「見沼たんぼの生きもの調べ」と「同改訂版」を制作し、生きもの調べの参加者や近隣の小学校や公民館などへ配布しました。