ドロンコたんぼができるまで

子ども達が自由に泥や生きものに触れ、遊べる場づくり

見沼ファーム21の体験水田の取組みから5年経過した2003年に、県より5年以上耕作放棄され、一部には砂利やコンクリートガラなどが投棄された荒地(休耕田)1,423㎡の活用を打診されました。

見沼ファーム21としては、保水や環境に不安はあったものの、米づくりの場である体験水田では子ども達が遊ぶことはできないため、泥遊びや水遊びが自由にできる場をつくれないかと考えていたメンバーの意見もあり、当面は米づくりの場ではなく、「ビオトープ」として運用・管理していくことで県と合意し、契約を交わしました。

2003年4月から見沼ファーム21の会員有志8名によって重機を入れてコンクリートガラを除去し、用水の水を入れ、トンボを使っての攪拌、亀裂の埋め戻しなど、池に水を溜めるための作業を始めました。ただし、作業を開始した1年目は、結局、水が溜まらず、その後、冬季の田起こし、代掻き、畦つけ、暗渠部の土盛りを徹底するなどして、ようやく2年目の夏から、子どもたちが何時でも自由に、安心して泥や生きものと戯れることができる場所「ドロンコたんぼ」として運用できるようになり、現在に至っています。

はじまり

体験水田の田植えに来た子どもたちが泥んこになって楽しんでいる姿を見て、自分が子ども時代に楽しかった水辺で遊んだ風景が思い出され、今の子どもたちにも思い切り泥んこ遊びができる場所を作りたいという思いが見沼ファーム21の数人の会員の間で話し合われました。

2003年、県より新たに委託された“思い出の里”近くの休耕田は、交通の便もよく散歩等の歩行者も多く、眺望も良いなどたくさんの子どもたちが遊ぶ場所としての立地条件に優れているとして、ここにどろんこで遊べる田んぼを造ることになりました。

目指すもの

本来田んぼは米作りの場所であり遊ぶ場所ではありませんが、単純(シンプル)で危険が少なく(深みのない)、目が届く広さで子どもたちが自由に泥と戯れることができる場所として、いつでもだれでも利用できる子どもたちの体感の場として提供する「水辺の景観、生き物との触れ合いの場、どろんこ遊びの場」を目指しています。

地道な作業

しかし長い休耕を経た田んぼの畦は崩れ、給排水口の位置も分らない状況だったため、先ず田んぼの表面をユンボで浅く削り、その土を幅4mに積み上げて畦を作り、池部分には二つの中の島を設け、水を入れました。しかし一夜にして田んぼの中の水が全て漏れて無くなるというトラブルが続き、当時10名足らずの見沼ファーム21の会員が連日畦つけやトンボを使っての撹拌、亀裂の埋め戻しなどの作業を続けましたが、一向に水がたまり ません。そして田の水漏れを防ぐには「代掻き」以外にはないとの農家の方からの助言を受け、冬季の田起こし、代掻き、畦つけ、暗渠部の土盛等の基本の作業に徹することを決めました。

翌 2004年5月に用水からの水が入り始めてからは、10日単位で水を撹拌することを繰り返した結果、7月頃には効果が見え始め、前年に鳩ケ谷市の「トンボ公園」から譲り受け風呂槽で越冬させていたメダカ250匹や小魚200匹を放流することに成功しました。

水と生きもの

水が溜まり魚が泳ぐようになった池は、また鳥たちの餌場ともなり、空から無防備であった池にヨシズを張り、「魚の隠れ家」を2か所作り、池らしい景観にもなりました。

一年を通して魚たちの住処となるようにと、冬場の水を確保するために掘った井戸の水量が少なく、冬水田んぼは諦めざるをえませんでした。当初は用水の水が切れる8月末頃に池の魚たちを捕獲し、古い風呂槽に移し越冬させ、翌年5月に用水の水が入り始めてから池に放流していましたが、近年は「自然」という観点から排水路への放水に任せています。

親子で泥んこになって

近隣の保育園の子どもたちも大喜び

休憩所として東屋を作りました

多くの人が利用する泥んこ遊びの場

見沼ファーム21の体験水田参加者への広報や口コミで、また見沼ファーム21ホームページなどから、体験水田作業後に立ち寄る家族や、休日の家族連れやグループでの利用、平日の幼稚園・保育園の活動として、最近は都内からも利用者が広がっています。多くの人たちが「子どもたちの泥んこ遊びの場―ドロンコたんぼ」へ足を運び、生きものを捕まえたり、思い切り泥んこ遊びを楽しむようになっています。

安心・安全のために

利用者の安全の確保や景観を維持していくために、遊ぶことで出来た池の深みへの砂入れ、畦の補強、夏場の池の水面を覆ってしまうアオコの除去など、会員は絶えず作業を繰り返し、安全確保を心掛けています。

利用者が泥を洗い流せるように井戸水を利用したシャワーを設置し、休憩所となる東屋をヨシズやワラを活用して2か所に作りました。また、利用者の声を直接聞くために「おてがみどうぞ」というポストにノートを設置。ノートには子どもから大人まで様々な、たくさんの利用者の声が届いています。

実験田んぼ・鑑賞池

池の手前に第1実験田んぼと鑑賞池、池の奥には第2実験田んぼと畑を作りました。

第1実験田んぼでは、いきなり大きな田んぼで試みるのは難しい不耕起栽培や摘田などに挑戦。不耕起栽培では雑草の生えない不思議な田んぼで美味しい米を収穫、ワラはわら細工の材料に提供しました。

鑑賞池は夏場の用水から入ってくる生きもの調べの場として利用しているほか、睡蓮や菖蒲などの水生植物を植えています。

第2実験田んぼでは赤、黒、紫などの鑑賞米の栽培や、畑ではサトイモや小麦などを栽培したこともありました。

畦や中の島は適度に刈り込んで草地とし、シロツメクサやヨメナが生え、春にはそこで食事会を楽しんだりしています。

中の島にレンゲや菜の花を植え、畦には元会員の寄付により、はさ掛け用にハンノキを植栽。環境・景観保全を心掛けています。